20180114 サンチ号からの原油流出

※2018年2月12日更新

概要


2018年1月6日、中国・上海沖合の東シナ海で、イランの海運会社所有のタンカー「SANCHI(サンチ)」(パナマ船籍)が、中国の貨物船(香港籍)と衝突、爆発を数回繰り返し炎上した後、14日に奄美大島の西約315キロメートル付近(日本の排他的経済水域内)で沈没した。同タンカーは、原油(コンデンセート[超軽質原油])約13.6万トン、残燃料油約2,120トン(A重油約120トン、C重油約2,000トン)を積載していた。
タンカーの乗組員は、イラン人30人、バングラデシュ人2人で、乗組員全員が死亡したとみられる(イラン当局発表)。乗組員2人は、中国の救助隊によりタンカーから回収され、乗組員とみられる遺体も1人発見されている(ロイター報道)。
中国政府の反応:『「(流出の油は)海洋環境に一定程度の影響を与えている」として調査や油の処理を進める考えを示した』(『タンカーの油「海洋環境に影響」』[2018/02/02 11:15 NHK])

補償制度

・「油濁損害補償制度について」(日本船主協会)

流出範囲

・約30平方キロメートル
・流出範囲周辺の11か所(360か所中)で基準を超える濃度の石油類が検出
※1月28日現在、中国・交通運輸省

日本国内

・各地で漂着した漂着油とサンチ号との関係について
「サンプル採取した SANCHI 号沈没位置付近の海面に浮流する油と、現時点で各島沿岸において採取した漂着油が類似するものであるという結果は出ておりません。ただし、今回の分析結果をもって直ちに、漂着油が SANCHI 号の沈没と関係が無いものと断定はできません」(海上保安庁)

漂着確認日地名
2018/01/28宝島
2018/02/01奄美大島
2018/02/02喜界島
2018/02/05与路島
2018/02/05加計呂麻島
2018/02/05徳之島
2018/02/05請島
2018/02/08沖永良部島
2018/02/08沖縄本島

※海上保安庁情報(2018/02/08現在)
※漂着情報のある与論島、屋久島は海上保安庁が確認中

専門家の見解

・鹿児島大学水産学部 中村啓彦教授ら(『重油「季節風で南西方向へ」』2018/02/08 NHK)

・重油はいったん黒潮の流れに乗って北上するものの、北からの強い季節風に押し戻される形で南西方向に向きを変えて、トカラ列島や奄美群島の方向に流れるという結果が得られた
・流出した重油の大半は、黒潮をまたいで南西諸島沿いに流されているとみられる。今後しばらくは漂着範囲が広がる可能性が高いが、沿岸に流れ着く重油の量は、かつてのナホトカ号事件などと比べ、格段に少なく、適切に除去する作業を行えば、これまで通りの海の環境を保つことは十分可能
・コンデンセートは揮発性が非常に高く、海中で希釈され、日本の沿岸にまで流れ着く可能性は低いと考える。しかし、漁業者など不安に感じている人も多いことから、水質検査などを行って影響が出ていないことを確認する必要がある

日本への影響

・2月1日:奄美市の海岸の広い範囲で黒い油のようなものが漂着しているのが確認された
・2月2日:喜界町の湾地区や池治地区など4つの地区の海岸で、大きいものでは30センチほどの黒い固まりの油のようなものが流れ着いているのを町の職員が確認した
・2月6日:奄美大島の海岸で、体長約40cmのウミガメが、口に油が入った状態で死んでいるのを発見

対応

・中国政府:調査・回収作業を開始

日本の対応

・2/2:総理官邸内危機管理センターに情報連絡室を設置
・2/2:「油汚染事故対策省内連絡会議」を開催
2/2:九州地方環境事務所長をチーム長とする「油汚染対策現地対策チーム」を設置
・第10管区海上保安本部:調査中
・喜界町:県や海上保安庁に連絡したうえで、除去作業の方法について検討中
・鹿児島県大島支庁:地元の市町村と連携して油のような物が流れ着いた範囲や量を調査、除去作業の方法などについて検討を進めている
・環境省:「これまでのところ大規模な汚染は確認されていないが、被害が発見されればすぐに対応できるよう態勢を強化したい」(2018/02/09 NHK報道)
・環境省:専門家を派遣、サンゴや藻の緊急調査(2/12以降)
・国・鹿児島県:自治体と連携しながら回収作業を進める

砂をかぶっているものが多く、基本的には手作業になりますが、作業する人の安全管理を徹底して、確実に回収作業を進めていきたい(鹿児島県大島支庁の島田公史建設課長)
「油のような漂着物 回収始まる」(2018/02/08 NHK)

・奄美大島:2月8日より、県の職員らが回収作業を開始(朝仁海岸)

回収状況

【20180210_10:30更新】奄美海上保安部発表漂着油除去・回収作業状況※写真は2/10 09:00の朝仁海岸回収ステーション付近2月8日・県大島支庁時間 午後2時~ 人員 県職員25名概要 奄美市朝仁海岸で除去・回収…

アマミテレビさんの投稿 2018年2月9日(金)


日時主体人員場所回収量備考
2018/02/08 14:00-鹿児島県職員
25名奄美市朝仁海岸約560キロ除去・回収作業
2018/02/09 13:30-奄美市職員50名奄美市朝仁海岸約1950キロ除去・回収作業
2018/02/09喜界町職員 20名喜界町スギラビーチ、池地ビーチ除去・回収作業
2018/02/09徳之島町職員、建設業協会会員等100名徳之島手々から金見の間除去・回収作業
2018/02/09伊仙町職員、建設業協会会員等30名伊仙町瀬田海岸除去・回収作業
2018/02/09天城町職員、建設業協会会員等 90名 天城町与名間海岸、松原漁港
除去・回収作業

回収マニュアル(鹿児島県)

鹿児島県作成の回収マニュアルは、こちらのページにあります。

リンク

・「奄美大島等における油状物関連情報」(海上保安庁)
※奄美大島等における油状物関連情報については、以下を御覧ください。なお、今回の分析結果(参照:2.「奄美大島等漂着の油状の物の分析結果について」)をもって直ちに、漂着した油状の物がS号の沈没と関係がないものとは断定できません
・「奄美大島周辺地域の油状漂着物に関する情報」(鹿児島県)
・「奄美大島等における油漂着事案に関する環境省の対応状況について」(環境省)
・「奄美大島漂着油マップ」(あまみてれび・あまみカメラ)

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