【新型コロナ】感染症まん延時の避難のあり方・避難所対策

新型コロナウイルスによる感染症が広がる中、自然災害時の避難のあり方や避難所対策についての懸念が行政や研究者、支援団体等から上がっている。ここでは、行政からの指針や、地震・風水害での実際の呼びかけや避難・避難所の状況、また、報道や各種専門家等による課題提起や提言についてまとめた。

行政のマニュアル・ガイドライン

厚生労働省

避難所における新型コロナウイルス感染症への更なる対応について』(2020/04/07 内閣府・消防庁・厚生労働省)では、以下を挙げている。

① 三密を避ける

可能な限り多くの避難所の開設:発災した災害や被災者の状況等によっては、避難所の収容人数を考慮し、あらかじめ指定した指定避難所以外の避難所を開設するなど、通常の災害発生時よりも可能な限り多くの避難所の開設を図るとともに、ホテルや旅館等の活用等も検討すること。
親戚や友人の家等への避難の検討:災害時に避難生活が必要な方に対しては、避難所が過密状態になることを防ぐため、可能な場合は親戚や友人の家等への避難を検討していただくことを周知すること。

② ホテル・自宅療養者対応

自宅療養者等の避難の検討:自宅療養等を行っている新型コロナウイルス感染症の軽症者等への対応については、保健福祉部局と十分に連携の上で、適切な対応を事前に検討すること。

③ 避難者の健康状態チェック

避難者の健康状態の確認:避難者の健康状態の確認について、保健福祉部局と適切な対応を事前に検討の上、「避難所における感染対策マニュアル」における症候群サーベイランスの内容も参考として、避難所への到着時に行うことが望ましい。また、避難生活開始後も、定期的に健康状態について確認すること。

④ 避難所の衛生対策

手洗い、咳エチケット等の基本的な対策の徹底:避難者や避難所運営スタッフは、頻繁に手洗いするとともに、咳エチケット等の基本的な感染対策を徹底すること。
避難所の衛生環境の確保:物品等は、定期的に、および目に見える汚れがあるときに、家庭用洗剤を用いて清掃するなど、避難所の衛生環境をできる限り整えること。
十分な換気の実施、スペースの確保等:避難所内については、十分な換気に努めるとともに、避難者が十分なスペースを確保できるよう留意すること。

⑤ 感染者等対応

発熱、咳等の症状が出た者のための専用のスペースの確保:発熱、咳等の症状が出た者は、専用のスペースを確保すること。その際、スペースは可能な限り個室にするとともに、専用のトイレを確保することが望ましい。同じ兆候・症状のある人々を同室にすることについては、新型コロナウイルス感染症を想定した場合には、望ましくない。やむを得ず同室にする場合は、パーティションで区切るなどの工夫をすることが望ましい。症状が出た者の専用のスペースやトイレは、一般の避難者とはゾーン、動線を分けること。避難所のスペースの利用方法等について、事前に関係部局や施設管理者等と調整を図ること。
避難者が新型コロナウイルス感染症を発症した場合:新型コロナウイルス感染症を発症した場合の対応については、保健福祉部局と十分に連携の上で、適切な対応を事前に検討すること。
※「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成 25 年 8 月(平成 28年4月改定)内閣府(防災担当))において、「感染症を発症した避難者の専用のスペースないし個室を確保することが適切であること」と記載しており、また、「避難所運営ガイドライン」(平成28年4月 内閣府(防災担当))において、「感染症患者が出た時の部屋を確保する」と記載しているが、新型コロナウイルス感染症の場合は、軽症者等であっても原則として一般の避難所に滞在することは適当でないことに留意すること。

小田原市

・『避難場所における新型コロナウイルス感染症への対応について』(2020/04/16 小田原市)

「避難」とは「難」を「避」けることであり、自宅での安全確保が可能な人は、感染リスクを負ってまで避難場所に行く必要はありません。
本当に避難場所に行く必要のある方を、適切に受け入れられるようご協力ください。
自宅が危険な場合も、避難先は市指定の避難場所だけではありません。安全な親戚・知人宅に避難することも考えておきましょう

気象庁

報道

・『新型コロナ拡大「災害時はこれまでと変わらず避難を」気象庁』(2020/04/15 NHK)
災害時の避難の呼びかけについては、自分の住んでいる場所にどのような危険性があるか、事前の確認が重要としたうえで「災害の危険度が高まった時には、たとえ外出自粛が呼びかけられている地域でも、これまでと変わらず迅速に避難してほしい」と呼びかけました。一方で、避難所に多くの人が集まった場合の感染拡大の懸念について関田長官は「私たちは自然災害の危険度を知らせることが役割だが、避難すると同時に感染を防止してもらうことも重要で、役立つ呼びかけがあれば、今後対応を考えたい」と話していました

避難所開設状況

2020年4月18日からの荒天

神奈川県伊勢原市

・避難準備・高齢者等避難開始
避難所開設数:3カ所 避難者数:0人
・④ 避難所の衛生対策:マスクなどを用意

神奈川県箱根町

【自主避難所開設】(湯本仲町集会所、大平台集会所、宮城野公民館、仙石原文化センター、元箱根集会所)
・開設避難所数:5か所
・対策
① 三密を避ける:避難者どうしが2メートル以上の適正な距離を取れるようスペースを係員が指定
① 三密を避ける:避難人数を半分以下へ→親戚などの家への避難も検討するよう呼びかけ
④ 避難所の衛生対策:気温にかかわらず換気を行う→寒さへの対策を避難者に求める

・箱根町メール
新型コロナウイルスの感染リスクが高まります。できるだけ自宅や知人宅などで安全を確保してください。やむを得ず避難所をご利用の方はマスク、食料、水を持参し、温かい格好でお越しください。この放送は午前9時22分に防災行政無線で放送しました。

栃木県鹿沼市

・2020年4月18日 避難準備・高齢者等避難開始

岩手県対象市市

・2020年4月19日 土砂災害警戒情報【警戒レベル4相当情報】

福島県福島市

・2020年4月18日 土砂災害警戒情報【警戒レベル4相当情報】

宮城県対象市

・2020年4月18日 土砂災害警戒情報【警戒レベル4相当情報】

茨城県高萩市・北茨城市

・2020年4月18日 土砂災害警戒情報【警戒レベル4相当情報】

2020年4月13日千葉南部荒天

鴨川市

避難勧告:土砂災害警戒区域(江見、曽呂、大山地区)34世帯80人
避難所開設数:3カ所、避難者数:0人
③ 避難者の健康状態チェック:避難者には保健師による検温と問診等→37.5℃以上の人には別室に避難してもらう。発熱のない人は同じ空間に避難してもらうが「十分な間隔をとってもらう」
④ 避難所の衛生対策:各避難所に体温計やマスクの準備、消毒液の設置、アルコール除菌シートの準備

南房総市

避難勧告:土砂災害警戒区域(地区)518世帯1298人
避難所開設数:7カ所(富浦、富山、三芳、白浜、千倉、丸山、和田地区)、避難者数:0人
① 三密を避ける:崖から離れた部屋や2階の部屋を含めた避難の呼びかけ
④ 避難所の衛生対策:体温計やアルコール消毒液の用意、避難者へのマスクの着用の呼びかけ(市緊急メール)

報道

・『千葉県で土砂災害警戒の避難所 コロナ対策も手配』(2020/04/13 日本経済新聞電子版)
鴨川市危機管理課では「新型コロナが終息するまでは今後も同様の対応になるだろう。市民も不安だと思うので、今後は避難する際にマスクの着用を事前に呼びかけるようにしたい」と強調。南房総市消防防災課は「『3密』にならないような体制をとろうと準備を進めた。保健福祉部など他の部署とも連携しながら、消毒液などの備品を手配した」と話した

・『南房総・鴨川、大雨で避難勧告 南房総市は月内に避難マニュアル』(2020/04/14 産経新聞)
感染予防のため、避難する市民を密集や密接から守るには、避難所を多く用意することが必要になる。しかし、(南房総市)消防防災課によると、これ以上の避難所の用意は難しい。一方で例年早ければ6月にも台風が発生する。そのため、新型コロナの中での災害時の市民の避難対応のマニュアルを早めに作ることを決めた

・『大雨で避難所 感染防止で全員体温計測の異例の対応 千葉 鴨川2020年4月13日 18時30分』
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200413/k10012384001000.html

2020年3月13日石川県能登地方を震源とする地震

2020年3月13日2時18分頃、石川県能登地方を震源とするマグニチュード5.5(震源の深さ:12km)の地震が発生。石川県輪島市で震度5強、石川県穴水町で震度5弱を観測した。

石川県輪島市

・避難所数:3か所 避難人数:1人

石川県穴水市

・避難所数:4か所 避難人数:4人
④ 避難所の衛生対策:新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、いずれもマスクや消毒液を準備

報道

・「1週間、余震の恐れ 輪島、震度5強 石川県内、人的被害なし」(2020/03/14 北國新聞)
県災害対策本部によると、避難所は輪島で3カ所、穴水に4カ所が開設され、輪島で1人、穴水で4人が一時避難した。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、避難所にはマスクや消毒液が設けられた

2020年3月11日:北海道東部の大雨・河川増水

前線を伴った低気圧の影響で、道東を中心に大雨(24時間雨量:えりも町目黒で95.0ミリ、釧路市阿寒で92.5ミリ)となった。また、雪解け水も合わさり、河川が増水した。

標茶町

【避難所開設情報】
『暴風雪で国道が通行止めになり帰宅が困難になった人が出た場合に備えて、午後10時半に茶安別地区の「茶安別農村環境改善センター」と、虹別地区の「虹別酪農センター」を開設』(2020/03/05 NHK報道)
【避難情報】
・警戒レベル4 避難勧告・釧路川水位上昇
旭、桜、富士、平和、麻生1丁目・2丁目、多和京大演習林の居住者→農業者トレーニングセンターに避難
・2020年3月11日06:00 警戒レベル4 避難指示【緊急】
旭、桜、富士、平和、麻生1丁目・2丁目(1165世帯2349人)→農業者トレーニングセンターに避難
【開設避難所数】
避難人数:254人
① 三蜜を避ける:避難者同士が近づきすぎないよう床にテープを貼ってスペースを区切った
④ 避難所の衛生対策:避難所の入り口に消毒液を設置
※町担当者によると「普段以上に気を使い、人手もかかった」とのこと(報道)

警戒レベル4 避難勧告・釧路川水位上昇釧路川の増水により被害の可能性がありますので、旭、桜、富士、平和、麻生1丁目・2丁目、多和京大演習林にお住まいの方は、農業者トレーニングセンターに避難してください。高齢者やお子さんの避難にご近所のご協力をお願いいたします。何かお困りの場合は、役場に連絡してください。

北海道標茶町さんの投稿 2020年3月10日火曜日

厚真町

・2020年3月10日14時、警戒レベル3 避難準備・高齢者等避難開始(16地区70世帯151人)
【避難所開設】
避難人数:11人

◆避難準備・高齢者等避難開始◆低気圧の通過に伴い、令和2年3月10日(火)昼過ぎからまとまった雨が降り、気温の上昇とともに雪解けが急速に進むため、土砂災害などの恐れがあり、土砂災害に関する警戒レベル3「避難準備・高齢者等避難開始」を3月1…

厚真町役場さんの投稿 2020年3月9日月曜日

報道

・『”大雨”と”雪解け”のダブルパンチ…河川増水で住民避難…避難所では “新型コロナ”対策にも気を配る』 (2020/03/11 UHB)
「避難所では新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、消毒液の設置や、避難者同士の間隔を一定に保つなどの対策が取られました」

SNSまとめ

【氾濫警戒情報】大雨と雪どけの影響で釧路川・新釧路川が増水 北海道標茶町に避難指示3/11』(Cocochan)

海外での災害

米国南部・竜巻災害

報道

・『米南部で竜巻相次ぐ 6人死亡、新型コロナ対策も中断』(2020/04/13 CNN)
ミシシッピ州の避難所は手指消毒剤を用意し、避難する住民にはマスクを着けて、できる限り他人との間に距離を置くよう呼びかけている。
アラバマ州知事は12日夜の悪天候を見越して非常事態を宣言し、人命が危険にさらされかねないとして新型コロナウイルス関連の命令は一時的に中止。避難所では感染防止のための対策を講じるとした。

報道

特集・意見

・『新型コロナ感染拡大の中での災害避難 75%が「行動に影響」』(2020/04/18 NHK)
「新型コロナウイルスの感染拡大が災害時の避難行動に影響すると思うか」尋ねたところ、4分の3に当たる75%の人が「影響する」と答えました。さらに、どのような影響があるか複数回答で尋ねると「避難所に行くが、様子を見て避難先を変える」が44%と最も多く、次いで「マイカーなど車の中で避難をする」が31%、「感染防止対策をして避難所に行く」が30%でした。「自治体が指定する避難所に行かないようにする」と答えた人も28%にのぼりました

・『新型コロナウイルス~避難所の感染対策を急げ』(2020/04/16 NHK『時事公論』)
。ウイルス感染の拡大が続くなかで、私たちは、例年よりも入念かつ冷静に、災害にどういう備えをしてどこへ避難するのか、家族で話し合っておく必要があります。また国や自治体はいま感染拡大防止で手一杯だと思いますが、想定外をなくし被害を小さくするため、できる限りの対策を急いでもらいたいと思います。

・『自然災害時の避難所「3密」解消に苦悩 兵庫県内市町は具体策打ち出せず』(2020/04/20 神戸新聞ネクスト)
防災担当者レベルでは検討を始めた市町もある。芦屋市は、指定避難所ではない図書館や集会所を新たな避難先の候補に挙げた。三木市は「分散避難」の候補地として、災害協定を結ぶ市内の大型複合施設「ネスタリゾート神戸」を想定する。密閉を避けるため、神戸市は「夏場は屋外の利用もあり得る」と答え、豊岡市は「在宅避難も選択肢」とした。ホテルなどの活用については、播磨町が「要援護者向けの福祉避難所への活用を想定してきたが、3密対策でも検討したい」とする一方、「ホテルそのものがあまりない」(丹波市)という市町も多かった

・『コロナ禍と災害 避難者の健康に配慮を』(2020/04/19 北海道新聞)
過密状況を避けるため、災害時はできるだけ多くの避難所を開設し、宿泊施設の活用も検討するよう自治体に求めた。対応が難しい自治体は、近隣市町村との広域連携も選択肢となるだろう。避難所の衛生の確保、避難者の健康状態を確認する人員の配置、マスクや消毒液、体温計、防護服などの備蓄も重要だ。感染が疑われる症状を訴える人が出た場合に備え、隔離スペースも用意しておかねばならない。自家用車で車中泊をする避難者が増えることも予想され、エコノミークラス症候群を発症させない目配りが必要となろう。避難所だけではなく、災害時に電気、水道、ガスなどのライフラインをどう確保するかもこの際、再点検しておきたい

・『避難所へ避難”することになったら…? 災害時と新型コロナ』(2020/04/12 NHK)
9年前に発生した東日本大震災では、岩手県内の避難所で、数十人規模でインフルエンザの患者がでたほか、4年前の熊本地震でも、南阿蘇村の避難所を中心にノロウイルスやインフルエンザの患者が相次いで確認されました

・『避難所「3密」の回避急務 梅雨の大雨災害など警戒』(2020/4/13 日本経済新聞)
避難所での感染症対策に詳しい新潟大の榛沢和彦特任教授(心臓血管外科)は、感染防止には避難者1人当たり2メートル四方のスペースが必要としたうえで「床に落下したウイルスを含んだ飛沫を吸い込む危険があり、簡易ベッドなどを用意することが望ましい」と指摘。避難者の密集を防ぐため「トイレや避難所そのものを多めに設置して避難者を分散させ、発熱している人向けに別の避難所を用意するなど、抜本的な対策が求められる」と話している

・『避難所「3密」防止が課題 災害時のコロナ対策、悩む栃木県内市町』(2020/04/10 下野新聞)
獨協医大医学部の小橋元(こばしげん)教授(公衆衛生学)は「自治体は水道、せっけんなど基本的な対策ができる環境が避難所に整っているか確認してほしい。市民はこまめな手洗いや、布製でもよいのでマスクを持参するなど、現状の感染対策を避難所でも心掛けるよう習慣付けておいてほしい」と強調している

・『緊急事態宣言下における豪雨時の避難行動について』(2020/04/18 中澤幸介)

専門家・専門団体等による考察

・『COVID-19(新型コロナウイルス感染症)流行下における水害発生時の防災・災害対策を考えるためのガイド』(小山真紀)
・『新型コロナウイルスを踏まえた水害時の避難・避難所等に係る課題「地域防災の視点から」(スライド)』(2020/04/18 災害情報学会オンラインセミナー 岐阜大学流域圏科学研究センター准教授 小山真紀)
・『今、災害が起こったときの避難所のリアル 3密、ボランティア来ず、お棺使えず、国の方針は?』(2020/04/17 あんどうりす)
・『被災地から考える新型コロナウイルス対策―その①【避難所編】』(2020/04/08 災害NGO結)

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